飲む打つ買うとは無縁の壮年、山下一夫。
コネ入社の年下課長にはイビられ、同僚からも下に見られる、そんなどこにでもいるような悲しいサラリーマンだった。
彼がある日会社帰りに見かけてしまう、ビルの裏通りで行われる若者の喧嘩の場面。
片方は、仁王像を髣髴とさせる大男と20代半ば程の青年。
もう片方は、大男に比べると頭一つ小さい見劣りがするフードの青年。
大男は巨体にも拘らず恐ろしいスピードで動き、コンクリートを蹴り抜く。
誰の目にも勝敗は決まっているように見えたが、圧倒的な力でフードの青年が勝ってしまう。
「足りねぇんだよ…筋肉だけじゃよぉ」
立ち去るフードの青年に思わず声をかけてしまう山下。
「十鬼蛇王馬」と名乗り青年は街並みに消えていく。
この先、まるで接点など一つもないような二人だが、「新幕の内ビル建設施工の権利」を賭けた仕合で、再び出会うことになる。
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